27 測定演算式
すでに述べたとおり、物体を表示する場合、カメラが受け取る放射線は物体自体からだけではありません。物体表面を介して反射される周辺からの放射線も収集されます。これらの 2 つの放射線の影響は、測定過程に存在する大気によってある程度吸収されます。さらに、大気自体からの
3 つ目の放射線の影響が加わります。
測定状態についてのこの説明は、下図に示すとおり、現実の測定においても同様です。無視されたものには、たとえば、大気中に分散する太陽光や視界外部のきわめて強い放射線源からの迷放射線などがありえます。しかし、こうした妨害は定量化が難しく、ほとんどの場合、それらは無視できるほどに小さいものです。無視できない場合、測定構成は、少なくとも教育を受けたオペレータには妨害のリスクが明白である場合が多いのです。その場合、たとえば、測定の向きを変更したり、きわめて強い放射線源を遮断したりして妨害を避けるために測定状態を修正するのはオペレータの対応力となります。
下図を使用して、キャリブレートしたカメラ出力からの物体温度を計算するための演算式を得ることができます。
短距離上にある温度 W の黒体源から受け取られる放射 Tsource
により、放射入力 (放射リニア カメラ) と比例するカメラ出力信号 Usource
が生成されます。ここで次の式が成り立ちます (方程式 1)。
または、簡易表記では次のようになります。
ここで、C は定数を表します。
そのため、放射線源が放射率 ε の灰色体である場合、受け取られる放射線は εWsource
となります。
ここで、収集される 3 つの放射力条件を定義できます。
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物体からの放射 = ετWobj
、ここで ε は物体からの放射量を表し、τ は大気の伝達率を表します。物体温度は、Tobj
です。
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周囲からの反射放射 = (1 – ε)τWrefl
、ここで (1 – ε) は物体の反射率を表します。外気源の温度は Trefl
です。
温度 Trefl
は、物体表面上のあるポイントから見える半球内にあるすべての発散表面の温度と同じであると想定されています。もちろん、時にこれは実際の状態を簡素化したものとなります。ただし、これは有効な演算式を得るには必要な簡素化であり、Trefl
は (少なくとも論理的には) 複雑な周囲の有効な温度を表した値として付与できます。
また、周囲の放射率を 1 と想定していることにも注意してください。これは、Kirchhoff の法則に則った適切な値です。周囲表面上に衝突するすべての放射線は、最終的にその同じ表面によって吸収されます。そのため、放射率は 1 となります。(ただし、最近の論議では、物体周辺の全球を考慮する必要があると言われています。)
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大気からの放射 = (1 – τ)τWatm
、ここで (1 – τ) は大気の放射率を表します。大気の温度は、Tatm
です。
受け取られる総放射力は次のように記述できます (方程式 2)。
各条件に方程式 1 の定数 C を掛け、同方程式に従い、対応する CW で U の積を置き換えると、次の式が得られます (方程式 3)。
Uobj
に対して方程式 3 を解くと次のようになります (方程式 4)。
これは、すべての
FLIR Systems
サーモグラフィ機器で使用される一般的な測定演算式です。演算式の電圧は次のようになります。
テーブル 27.1 電圧
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Uobj
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温度 Tobj
の黒体に対する計算されたカメラ出力電圧。例: 実際の要求された物体温度に直接変換できる電圧。
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Utot
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実際の測定されたカメラ出力電圧。
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Urefl
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キャリブレーション応じた、温度 Trefl
の黒体に対する論理上のカメラ出力電圧。
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Uatm
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キャリブレーション応じた、温度 Tatm
の黒体に対する論理上のカメラ出力電圧。
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操作時には、計算には多数のパラメータ値を入力する必要があります。
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物体の放射率 ε
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相対湿度
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Tatm
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物体の距離 (Dobj
)
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物体周辺の (有効な) 温度または反射周辺温度 Trefl
-
大気の温度Tatm
実際の正確な放射率や大気伝達率の値を見つけるのは通常容易ではないため、オペレータにとってこれは時に困難な作業となる場合があります。周辺に大量の強力な放射線源がない場合、これら 2 つの温度は通常問題にはなりません。
この関係において問題となるのは、こうしたパラメータの正しい値を知ることの重要性についてです。しかし、いくつかの異なる測定を検討したり、3 つの放射線条件の相対的な重要性を比較することで、こうした問題がすでに存在するという印象を受けるのは興味深いこととも言えます。どのパラメータの適切な値をいつ使用することが重要かということについての指針を与えてくれるからです。
この後に示す図では、3 つの異なる物体温度、2 つの放射率、および 2 つのスペクトル範囲 (SW と LW) に対して 3 つの放射線が与える影響の相対的な重要性を示しています。残りのパラメータには次の固定値があります。
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τ = 0.88
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Trefl
= +20°C
-
Tatm
= +20°C
最初の測定では「妨害」放射線源は比較的強力であるため、低い物体温度の測定は、高温の測定より重要であることは明白です。物体の放射率も低い場合、状態はずっと難しくなります。
ここでやっと、補外法と呼ばれる最高キャリブレーション ポイントより上のキャリブレーション曲線を使用できるようにすることの重要性についての質問に答えることができます。ある測定にて、Utot
= 4.5 ボルトを測定していると想定してみます。カメラの最高キャリブレーション ポイントは、4.1 ボルト、オペレータの知らない値の順でした。そのため、物体がたまたま黒体 (例: Uobj = Utot
) である場合であっても、実際には 4.5 ボルトを温度に変換する際のキャリブレーション曲線を補外法で推定することになります。
ここで、物体が黒ではなく、0.75 の放射率と途中の大気が 0.92 の伝達率を持っていると想定します。また、方程式 4 の 2 つの第二条件は総計で 0.5 ボルトであると想定します。方程式 4 を使用した Uobj
の計算結果は、Uobj
= 4.5 / 0.75 / 0.92 – 0.5 = 6.0 となります。これは、特にビデオ増幅器の出力制限が 5 ボルトである可能性があることを考えると、非常に過激な補外法といえます。ただし、このキャリブレーション曲線の応用は、電気的制限などが存在しない論理的手順であることに注意してください。カメラに信号制限がなく、5
ボルトよりずっと上の値でキャリブレートされた場合、
FLIR Systems
アルゴリズムのようにキャリブレーション アルゴリズムが放射物理学に基づいているなら、結果曲線は 4.1 ボルトを超えて補外法で推定された実際の曲線とまったく同じになるはずです。もちろん、そうした補外法に対する制限は存在するでしょう。